大山哲のこの一冊!舟を編む
こんにちは。大山哲が選ぶ今日の一冊は舟を編むです。
今大人気の俳優と女優で映画化もされ、日本アカデミー賞でも6部門を受賞しました。そして、この作品は女性ファッション雑誌で連載されてから出版されたというのも異色です。
私は最初に映画から入った口ですが、作者の三浦しをんさんは、まほろ駅前シリーズで出会っています。
この方の作品は、いつもユニークな視点の作品が多いのですが、突拍子もない話を描くというよりは、どこかにありそうな世界で本当にいそうな人々の特別な関係や、独特の性格に注目したものが多いので、自分の知り合いを登場人物に重ねてしまい、入り込んでしまいます。
ブログのために調べて見たら、私が読んでいた、まほろ駅前シリーズの最初の作品の多田便利軒は、彼女が29歳で直木賞を受賞しているんです。
そして、彼女が大学を出てから出版社で働いていたという経歴を見て、舟を編むには彼女の体験も含まれているのかと思いました。
彼女の体験と書いたのは、舟を編むという作品は、新たな辞書を編纂する編集者の話だからです。
主人公の馬締光也は、名前の通りにまじめが取り得の人物で、大学院で言語学を学んでから入社しています。
大学院出でまじめな性格に加えて、人と話すのがあまり上手でないので、最初に配属された営業部では厄介もの扱いをされていました。
皮肉も通じないまじめさが、光り出すのは、彼が辞書編集部に配属されてからです。
辞書編集部で取り組んでいた辞書は、これまでの辞書とは違う個性を出すために、「見られる」のようなら抜き言葉や、「憮然」のように本来は失望している姿だったのが怒りを表す姿を現すように意味が変わってしまった言葉など、生きている言葉を取り上げようとします。
編纂の責任者である松本先生の最新の言葉を拾うために合コンにも参加する熱心さや、後輩の西岡に影響を受けながらもがく馬締は、最初読んでいて少しイラッとするのですが、なぜか読むのをやめられず引き込まれます。
そして、彼の変わっていく姿に、これまで私がまじめで要領の悪い人とちゃんと付き合っていなかったのではないかと反省させられます。
話がどんどん面白くなっていくのは、馬締が大家さんの孫の林に恋をしだしてからです。
辞書の「恋」という言葉の解釈をまかされて、自分の境遇とも重ね合わせながら悩んだ末に出した解釈は、ちょっと生々しさすら感じました。
ここには書きませんので、是非、恋の解釈を本で確認してみてください。