大山哲と本。

大山哲。本が大好きです。オススメの本や読みやすい本を紹介していきます。

大山哲のこの一冊!母性

こんにちは。大山哲が選ぶ今日の一冊は母性です。2012年に発売された母性は、湊かなえさんが作者で、今回もハラハラドキドキの展開が待っています。


湊かなえさんと言えば、小説「告白」が一番有名だと思いますが、これがデビュー作なんだから驚きです。告白は、2009年に本屋大賞を受賞し、大ベストセラーとなり、2010年には松たか子主演で映画化もされました。


彼女の作風の特徴は、一人称で語られることが多く、謎解きのように読み進めるごとに色んな事実が判明していく点にあります。


ですから、最初から最後まで息も止まらぬ展開を見せてくれる作品が多いんです。
今回の母性も、母と娘、それぞれの視点からストーリーが展開されていきます。


母性という題名からもあるように、母にとって娘という存在は何か、娘にとって母という存在何かについて非常に深く考えさせられます。


女性なら誰しも母性があり、子供を産むことでさらに強くなるものだと世間一般では考えられていますが、そうではないんだよ、母性を持たずに母親になってしまった女性もいるのだよとこの小説では語られています。


虐待問題や毒親など、現代の社会で深刻化している問題を浮き彫りにさせる、そんな内容になっています。
湊かなえさんは、親と子の歪んだ関係について描くことを非常に得意としており、日本の家族の在り方、社会の在り方について問題提起をしている小説家です。


今回の小説、母性の主人公ともなるルミ子は、まさに母性が欠けた女性であり、自分の娘を愛することよりも、自分の母親に愛されることを全てにしていたような女性です。


そして、そんな母親に育てられた娘、清佳は苦しみながらも母親を愛そうと必死に努力し続けます。
母親、ルミ子の視点から描かれる物語と、娘、清佳の視点で進んでいくストーリーには、大きな隔たりがあります。


これが物語を残酷に、悲しいものにしているんですね。


主人公のルミ子は画家と結婚し、娘も生まれ幸せな生活を送っていたのですが、ある日、自分の母親が家に泊まりに来ていたときに火事が起こってしまいます。
その時に、娘の清佳を助けるために母親を犠牲にして、という展開になるのですが、これが物語の一番の鍵となる部分なんです。


母親が亡くなった日を境に、ルミ子はコントロールが効かなくなり、さらに歪んだ自己愛の世界に没頭していきます。
正直、母の愛を信じ切っている者からしたら何とも苦しい話でした。

でも、母親ならこうあるべきだと社会の価値観を押し付けること自体が間違っているのかもしれません。小説「母性」は、親とは何か愛とは何かを深く考えさせられる一冊です。