大山哲のこの一冊!流星ワゴン
こんにちは。大山哲が選ぶ今日の一冊は流星ワゴンです。
もともとは小説誌に連載されていた作品で、そのころからいい評判を耳にしていたのですが、文庫本になってようやく読みました。
結果として、もっと早く読んでおけば良かったなと思っています。自信を持って皆さんにもオススメできる一冊です。
流星ワゴンは、永田一雄という38歳の男が主人公です。
奥さんも息子もいるのですが、けっこうひどい状況に置かれています。永田一雄自身は仕事でリストラされていて、奥さんともうまく行かず離婚寸前、息子も受験がうまく行かずに大変な状態です。
さらに、永田一雄の父もガンで入院していて、余命はほとんどありません。家族全体がバラバラになりかけている状態です。
そんな時、父親の見舞いの帰りに永田一雄はあるワゴン車と出会います。これが不思議なワゴン車で、それに乗ると過去に行けるのです。
過去の世界では主人公の父親が一雄と同じ年齢で登場して、行動を共にすることもあります。
このワゴン車は不思議な存在で、永田一雄とその家族が置かれているシビアな状況と比べると合わないように感じるかもしれません。しかし、ワゴン車はかなり重要な存在です。
過去の世界へ行くことで、奥さんや息子がどうしてうまく行かなくなったのか、その理由を知ることになります。
人生がうまく行くように、どうにかして軌道修正しようと努力しますが、あまり成果は出ません。「過去に戻る話」にはいろいろ例がありますが、大抵は過去を修正して現代の状態も良くするものです。
しかし、流星ワゴンは、あまり状況を変えられないのが特徴です。
結果として、ワゴン車で過去に戻っても完全な問題の解決にはならないのですが、家族で前向きな姿勢を見せる終わり方となります。
ご都合主義で万事解決とせず、問題の大きさや根深さを理解しつつ、解決に向かう姿勢を見せるのは感激しました。過去に戻る話でありながら、とてもリアルな感じがするのです。
希望の見える終わり方はとてもステキです。
小説の流星ワゴンは好評だったようで、テレビドラマにもなっています。こちらもなかなか好評でした。
永田一雄役は西島秀俊さんです。
ほかの出演者の皆さんも文章のイメージに合っていたと思います。
流星ワゴンにこれから触れる人は、小説とドラマのどちらを先にするか迷うかもしれませんが、どちらもオススメできます。