大山哲と本。

大山哲。本が大好きです。オススメの本や読みやすい本を紹介していきます。

大山哲のこの一冊!下町ロケット

こんにちは。大山哲が選ぶ今日の一冊は下町ロケットです。ドラマ化もされた人気小説ですが、作者の池井戸潤さんはこの本で直木賞を受賞しています。「倍返しだ!」の半沢直樹シリーズでも大人気の作家です。
主人公の佃航平は、7年前まで宇宙科学開発機構でロケットの水素エンジン開発の研究者でした。しかし、『セイレーン』という名前のロケットの打ち上げに失敗してしまい、結局、父親の経営する町工場を引き継ぐようになります。この工場の場所が東京都の日本のモノづくりの象徴である大田区なのです。


経営の経験など全くない航平が、技術者としての知識や計算で町工場の売り上げをアップさせていきます。しかし、突然大口の主要取引先から取引の打ち切りを持ちかけられます。また、ライバル企業で佃製作所より大手のナカシマ工業には特許侵害訴訟を起こされてしまいます。


大手企業と中小企業の争いは世間的に大手企業に有利になってしまうのが現実で、他の取引企業からも取引が少なくなり、売り上げも激減してしまいます。

父親の代から付き合いの白水銀行にさえ、借入が保留になってしまうのです。

さらに、大企業の帝国重工から、佃製作所が特許を持つ水素エンジンバルブの購入が持ちかけられます。

帝国重工は新型ロケットの開発中で、佃製作所の持つエンジンバルブこそが新型ロケットに必要な技術だったのです。


巨額な金額で特許を買い取ると持ちかけられている経営の厳しい町工場ですが、航平の出した答えは「特許を売るのではなく、佃製作所で製造したものを納品する」ということでした。

コストもリスクもかかる判断に当然社員は大反発します。元々のロケット開発の失敗も知る社員たちなので、「仕事と夢とを公私混同するな」と言います。

特許は一度手離すと自分たちの実績も失ってしまうこと、特許を取得した技術の他の分野への応用も失ってしまうことを航平は熱意を持って伝え続けます。


ナカシマ工業の起こした訴訟が、結果的に内部分裂を起こし、佃工業に和解金56億円が入り、融資の目処も立ちます。
帝国重工の社内テストで燃焼実験が失敗しますが、佃製作所に不備はありませんでした。

部品の社内調達を掲げる社長の藤間も、もとは航平と同じセイレーンのロケット開発事業に携わっていたことも分かりました。


佃製作所のバルブは帝国重工に正式採用されます。そして、種子島で打ち明げられたロケット『モノトーン』の成功を航平は娘と一緒に見上げるのです。
「正義は勝つ!」爽快な逆転劇、池井戸作品らしいエンターテインメントで、とても楽しめる作品でした。