大山哲と本。

大山哲。本が大好きです。オススメの本や読みやすい本を紹介していきます。

大山哲のこの一冊!火花

こんにちは。大山哲が選ぶ今日の一冊は火花です。


「花火」はお笑いタレントの又吉直樹による純文学デビュー作品です。
お笑いタレントらしからぬ純文学な内容が注目を集め、何と芥川賞受賞という快挙を達成した作品でもあります。


私もテレビやSNSなどのネットでも話題を呼んだことが、手に取るきっかけになりました。
物語は売れない芸人・徳永と先輩芸人・神谷を中心に展開します。


熱海湾で開催される花火大会の営業に赴いた徳永は、先輩の神谷と出会い、飲みに誘われます。


「笑い」について議論する二人、徳永は人間味あふれながら奇想の天才である神谷に弟子入りを申し出るのです。
神谷は驚きながらも「俺の伝記をかけ」という条件を提示、徳永はそれを快諾し、師弟関係を結ぶのです。
徳永は神谷を「笑わせたい」一心で漫才に力を入れます。


その甲斐あってか、徳永は深夜番組への進出が決定し、少しずつ露出が増えていきます。
しかし、神谷はパッとしません。同棲していた彼女に新しい彼氏ができたため、家を出ることになったのです。


何とかして神谷を笑わせようとする徳永、ニコリともしない神谷、そんな二人に少しずつ距離ができはじめ、借金を背負った神谷は行方をくらまし、徳永の前から姿を消すのでした。


その後、徳永の仕事も減っていきます。相方からは恋人が妊娠したことや結婚の決意を伝えられ、これを機に漫才コンビを解消し、芸人を辞めることを告げられるのです。


10年続いた漫才コンビの解消にショックを受ける徳永は、芸人の道を諦めることを決意します。
そして、ある時、徳永はふとした偶然から神谷と出会うのでした。


「花火」は、大正や昭和初期の雰囲気を感じさせる文体で、どんでん返しありの今時の小説とは異なります。


劇的な展開こそないものの、二人の心象風景や思いは、否が応でも変化していきます。
クスッとする漫才のような徳永と神谷のやりとり、お笑いに対する情熱や売れないうまくいかないことへの葛藤など、現役の芸人だからこそ表現できる描写が大きな特長です。
一方で、純文学を意識したのか、時折見られる「畢生(生を終える時までの時間)」などの難しい表現や、主人公のセリフが冗長さなど、デビュー作品らしい硬さもあります。


漫才師の人生を打ち上げ花火になぞらえた「花火」という題名は、二人の芸人、特に神谷の芸人としての生き様を表現したものだと感じました。


「花火」は純文学を読んだことがない初めての方、難しいと感じる方に、是非読んでいただきたい一冊です。