大山哲のこの一冊!果断
こんにちは。大山哲が選ぶ今日の一冊は果断です。
警察小説としては異色の、キャリア官僚ポストの人間を描いた作品で、絶妙のストーリー展開が最高でした。
大山哲が最近読んだ作品の中では、ピカイチの面白さがありました。
ストーリーとしては、家庭内不祥事で配置転換させられたキャリア官僚の主人公竜崎が、署長として赴任した警察署でその明確かつ合理的な思考において事件を鮮やかに解決していくというものです。
主人公の思考や行動、及び周囲との人間関係が、この作品の魅力の一つと感じました。
特に着目したいのは、主人公の考え方。普通の人間なら手を抜いたりやっつけ仕事をする所でも、当たり前のことは一切手を抜かず、とるべき手続きはきちんと踏む。
その一方で無駄と主人公が考える会食や顔合わせなどは、一切しない。
周囲と安直に調和しない姿勢もサラリーマンなどには共感を呼ぶ部分だと思います。
偏屈な人間として周辺には通っている設定ですが、一定の側面から人望を呼んでおり親しまれている所などは、ギャップがあって人間味を感じさせてくれます。
その延長線上として、この作品に出てくる立てこもり事件に関する警察内部の権力や派閥争いに関しても、実に納得感のある采配をみせてくれます。
この痛快感と納得感は、ほかの著作でもなかなか味わえない、本作の特徴的部分です。
元々この「果断」は今野敏氏の作品の中でもシリーズとして刊行されている「隠密捜査」の第2段にあたります。
第一弾を読んでいなくても、全く問題なく読める内容になっていますので、この著者の作品を読んだ事の無い方は、是非この作品から読まれるのも大山哲はよいかと思います。