大山哲と本。

大山哲。本が大好きです。オススメの本や読みやすい本を紹介していきます。

大山哲の今日の一冊!ワイルド・ソウル

こんにちは。大山哲が選ぶ今日の一冊はワイルド・ソウルです。

 

ワイルド・ソウル:アマゾン

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一気に読み終えた直後、作者の垣根涼介氏が、直訳すれば「豪放な魂」なる日本語が当てはまるタイトルをつけた意図が鮮明に突き刺さった、インパクト十分の作品です。

1960年代初頭、日本政府が推進から希望者を募ったブラジル移住計画に人生を賭けた家族を待ち受けていた、想像を絶する厳しいを越えた残酷な現実に関しては、予備知識としてご存知の方々もいらっしゃる事でしょう。
この歴史上の事実すなわちノンフィクションから、夢の楽園だと偽って自分達をブラジルにいわゆる「島流し」した日本政府に対し、地獄を見た渡航者達が復讐を企てるフィクションが続く展開に、途中で本を置く事が出来ませんでした。
ちなみに少し専門的なウンチクで恐縮ですが、こうしたフィクションとノンフィクションのブレンドを用いた小説は他にも多々みられますが、同作品の匙加減は本当に絶妙かつ抜群だと感心させられました。

読み始めは歴史事象を冷静に伝えるノンフィクション色が占める世界から、一気に世界屈指のジェットコースターに乗せられたかのような想定外の急展開の連続と、緩急の素晴らしさが、私達読者の心を捉えて離しません。

垣根涼介氏の書き手としてのポテンシャルの高さにも、偉そうに感服させられました。

ちなみに大山哲が主人公とオーバーラップさせた有名人が、少年期にこの物語そのままに一家でブラジルに渡り、日本プロレスの祖にスカウトされ、燃える闘魂と称された元プロレスラーでした。
その後政治家に転身され、現在は日本政府サイドで闘っておられるリアルな現実と彼の生き様もまた、ブラジル時代の地獄の毎日によって育まれ培われたのかも知れません。
奇しくも彼が折に触れ、自身の言葉で回想されているブラジル時代の体験談と見事過ぎる程に重なっていて、真実の重みとそれを掻い潜って来られた人間力が、彼のカリスマ性に繋がっているのだろうと気づかされました。
おっと、少し話が脱線してしまいましたね。

多数の読者が感想を語る声に目を向けてみても、ストレートに「面白さと次の展開が待ち切れぬドキドキ感に惹き込まれた」「途中で止められず寝不足」など、作品の求心力を語るコメントが数多く見られました。


奇しくもリオオリンピックの開催国として、世界の視線が集まったブラジルの、今から約半世紀と少し前の姿が生々しくも冷静に綴られた情景描写が、この物語により一層の緊張感を持たせています。

作品の世界に没頭する熟読タイプの読書ファンであれば、この一冊をスルーする手はありません。