大山哲と本。

大山哲。本が大好きです。オススメの本や読みやすい本を紹介していきます。

大山哲の今日の一冊!名もなき毒

名もなき毒:Amazon

 

こんにちは。

 

大山哲が選ぶ今日の一冊は名もなき毒です。

 

この作品を通じ、作者の宮部みゆきさんが描く世界には、実社会を生きる上で私達が見失いがちな、数多くの教訓が含まれているように思えました。

誰もが少しでも「上に行きたい」「評価されたい」という願望を抱いていて当然です

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し、勿論私、大山哲も同じです。
それを日々の努力や生きる姿勢で勝ち取れば問題ありませんが、例えば経歴詐称など、自分のスタートラインだけをズルして前にずらすような行為を企てる人が、残念ながら後を絶ちません。


また複雑な人間関係は時に、好き嫌いなどアンフェアな感情が渦巻く環境を作り上げてしまいます。
全く仕事が出来ない人間を「お気に入り」なる理由だけで重宝する、一方で目に余る勤務態度を理由に解雇された人間が、不当解雇だと逆恨みから復讐に走ってしまうなど、いずれも私達の身近で現実に生じても不思議ではありません。

 

この物語の登場人物はもしかすれば、私達自身なのかも知れないと、そんなふうに考えさせられました。


名もなき毒というタイトルはおそらく、逆恨みという感情が人間を思わぬ行動へと駆り立ててしまう、何とも恐ろしい現実を指しているのでしょう。
本人には最初は何の悪意も無く、ほんの小さな誤解やボタンの掛け違えが、不満や恨みなどの負の感情をいつしか膨らませ続けてしまうみたいです。

とりわけシチュエーションが似通っている職場や生活環境で生きておられる方々にとっては、背筋が寒くなる場面が随所に出て来るかと思われます。
「もしかしたらあの人も」など、実在の人物に重ね合わせてしまい過ぎては、読書後の皆さんの実生活の人間関係に悪影響が生じ兼ねない、それ程にリアルな状況描写が心に迫る作品です。

 

少し話が横道にズレますが、実は私自身、気の置けない仲間内でお酒が入ると、無意識にこんな台詞を繰り返しているみたいです。
「法律が無かったらこの手で消し去ってやりたいヤツがいる。子供の頃のいじめっ子のA、学生時代のB、それから以前の職場の上司だったC」がお決まりの愚痴だと、周囲を呆れさせていました。
勿論この作品を読んだ後は、口外せぬよう気をつけているつもりですが、酔いが回れば果たして守り切れているかどうか、正直自身はありません。

 

ちなみに同作品を原作にテレビドラマ化されましたが、こちらは同じく宮部さん原作の誰かSomebodyがエピローグ的に用いられています。
主要登場人物の杉村三郎の人となりはこちらの作品で、より深く知る事が出来ます。
合わせて読まれる事で、よりリアルな世界観の中に引き摺り込まれるに違いありません。