大山哲と本。

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大山哲の今日の一冊!オリンピックの身代金

オリンピックの身代金:Amazon

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こんにちは。

大山哲が選ぶ今日の一冊はオリンピックの身代金です。

 

舞台は1960年代初頭の東京で、奇しくも戦後初の東京五輪開催を控え、高度成長期と称された時代背景が、当時をご記憶の世代の方々には懐かしく思える事でしょう。

作者の竹野内豊氏の絶妙なストーリー展開と描写から、もしかすればノンフィクションではと錯覚させられる程、物語はリアリティ溢れる展開で、私はグイグイと惹き込まれてしまいました。

 

ちなみにストーリーを少しだけご紹介しますと、昭和39年の東京オリンピック開催に際して厳戒態勢下の東京で、よもやの連続爆破事件が発生するところから話が始まります。
しかも爆破されたのが、最初は東京五輪の警備本部幕僚長の自宅、次に警察学校と、単なる事件では無い、いわば官憲への挑戦に他ならなかったのです。
東京五輪開催前に国内情勢がこれでは大問題と、国家は極秘裏の解決を指示する中、今度は「必ずやオリンピックを妨害してみせる」なる脅迫状が届きます。
ここから主人公の捜査一課刑事の落合昌夫と容疑者の攻防が続く、そんな流れが描かれています。

 

また文中「ヒロポン」「プロレタリアート」「学生運動」など、平成世代の読者にはピンと来ないであろう、懐かしい言葉が登場し、リアルタイムを知る方々をタイムスリップの世界に誘ってくれます。
私、大山哲も世代的には当時を知らない世代ですが、漠然と見聞きして自分なりに捉えていた1960年代を、よりリアルに確かめられた気がしています。
当時の若い世代は現代の同世代と比較して、ずっと精神的に大人で行動力にも長けていたと言われますが、なるほどと納得させられる、そんな描写も随所に見られます。
犯罪は全て認める事も許せるハズもありませんが、昨今の陰湿な犯罪と比べた際に、このスケールの大きさをどう感じ取るべきなのか、自問自答させられました。

 

全体を通じて緩急に富んだ展開で、飽きずに一気に読み進んでしまいます。
短編のエッセイなどは読めても、本格派の小説は苦手とおっしゃる方々にも、ぜひ読破にチャレンジいただきたい作品です。
お気に入りのDVDを繰り返し観賞する感覚で、何度でも読み返せるオススメの1冊です。


数年後に2度目の東京オリンピック開催が決まり、21世紀の東京都もそれに向けての整備が進められ、次第に警備も強化されて行く事でしょう。
この作品を知った上で、今後都内で遭遇するさまざまな風景を目にすれば、政府そして警察の警備の裏側や、どのような犯罪を想定しているのかなど、興味深い発見に繋がるかも知れませんね。