大山哲と本。

大山哲。本が大好きです。オススメの本や読みやすい本を紹介していきます。

大山哲の今日の一冊!オーデュボンの祈り

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オーデュボンの祈り:Amazon

こんにちは。

大山哲が選ぶ今日の一冊はオーデュボンの祈りです。

 

同作品は作者の伊坂広太郎氏のデビュー作で、果たしてどのジャンルに属するのか、簡単な判断が難しい、独自の世界観で物語が綴られています。
大山哲流にご紹介すれば「伊坂ファンタジーとミステリーの世界」となりますが、ご一読された皆さんは果たしてどう感じられるのか、興味深いところです。

 

主人公の伊藤は企てたコンビニ強盗に失敗し逃走中で、見知らぬ島に逃げ着きます。
そこは江戸時代以来今日まで、完全に外界とは全てが遮断され続けている「荻島」で、島民は全て妙な人達ばかりです。
日本の法律を無視した島の法律で殺人を許された人物が居たり、人の言葉を操り未来が分かる案山子が立っているなど、まさに亜空間で、伊藤は戸惑うばかり。
そして伊藤が到着した翌日、未来が見えるはずの案山子が無残にもバラバラ状態で殺され、何故か頭だけ持ち去られてしまいます。

 

物語は逃亡者の伊藤が次々と不思議な島民と出会い、彼等と交わす会話を軸に描かれて行きます。時系列にそって淡々とストーリーが進んで行きますが、伊坂氏ならではの言葉の操り方で、それぞれの場面の情景が鮮明に見えて来ますので、読み進めて行くのに疲れを感じません。


基本的には非日常的なノンフィクションの世界ですが、謎解きが絶妙のバランスでブレンドされていて、程良く頭を使わせてくれる作品です。

これがデビュー作なのかと評判になったのも納得です。ラストシーンに向かう流れは、特にどんでん返しが待っている訳でも無く、ある意味納得のエンディングですが、スッキリ爽快感を覚えると同時に、大きな学びもプレゼントされました。


未来が分かっていればもっと出世して、もっとお金持ちになって、もっと自分の意のままの人生が歩めると思いがちな大山哲ですが、果たしてそれが本当に幸せで正しい事なのか、自問自答の機会を与えられました。犯罪者になってはなりませんが、ぜひ皆さんも伊藤の立ち位置から、この不思議な世界での出来事と対峙される事をオススメします。
こうしたミステリー色を含む作品は、1度結末が分かってしまうと、次に手が伸びにくい傾向が見られますが、肩肘張らずに何度でも読み返し、その都度楽しめる1冊だとご紹介出来ます。


またご自身で文章を綴るのがお好きな方、あるいはこうした作業をお仕事とされている方々にとっては、伊坂氏ならではの表現や言葉のチョイスが、大きなヒントやお手本になるに違いありません。