大山哲と本。

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大山哲のこの一冊!禁断の魔術

こんにちは。大山哲が選ぶ今日の一冊は禁断の魔術です。


今回紹介する小説は、テレビドラマで大人気となった「ガリレオ」の8作品目にあたる作品です。
ガリレオシリーズ最新刊、しかも原作者の東後圭吾による大幅加筆修正を加えた完全書き下ろしということで楽しみにしていました。


前作の「虚飾の道化師ガリレオ7」と連続しており、第1章の透視す、第2章の曲球る、第3章の念波る、第4章の猛射つで構成されています。
読書後に確認したのですが、1~3章は文庫本の虚飾の道化師に収録されていますので、ここでは「猛射つ(うつ)」に触れたいと思います。


湯川(ガリレオ)のもとに訪れた、小芝伸吾という青年を中心に物語は進みます。
新入生の小芝は、帝都大理工学部の湯川研究室を訪れます。小芝は湯川の教え子であり、科学の魅力に惹かれ帝都大学を受験し、見事合格していたのでした。しかし、小芝は翌年の3月に退学してしまいます。


そんな折、あるフリーライターが殺害されるという事件が発生します。湯川のもとに訪れた捜査関係者によると、容疑者は教え子の小芝であること、退学後にクラサカ工機という金属加工会社に就職していましたが、その後、行方不明になっており、新しい殺人事件計画を立てているというのです。
湯川は、かつての教え子が殺人事件にかかわる容疑者になっていること、殺害方法が湯川自身が教えた科学実験や技術を改良したものであることを知り、驚愕するのでした。
小芝は本当に殺人犯なのか、犯人だとするなら動機は何なのか、思い悩んだ湯川は小芝との対決を決意するのです。
今までのガリレオ作品のように、どんでん返しのような要素は少なく、スムーズでスマートなストーリー展開を楽しめます。


小芝の言動も一見単純に見えはしますが、10代後半から20代前半と人生経験の浅いことを考え合わせると十分にありえるでしょう。
何より注目したいのは、湯川の教え子に対する優しさです。


学んだ技術を改良した大掛かりな装置を使って目的を遂げようとする小芝に対し「そんなことをするために科学を教えたわけではない」という言葉にすべてが込められています。
湯川は、他人の感情にあまり関心を示さない科学者として描かれてきましたが、今回は違います。
教え子を思いやる、ガリレオの人生の先輩としての顔を見ることができるので、関心のある方にはぜひおすすめします。


最後に、湯川はニューヨークへ飛び立ちます。
暫くの間は続編がないということなのでしょうか。そうだとしたら、ちょっと残念な気がします。