大山哲と本。

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大山哲の今日の一冊!坂の上の雲

こんにちは。大山哲が選ぶ今日の一冊は坂の上の雲です。

 

坂の上の雲:あらすじ紹介ページ

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タイトルから国営放送でオンエアされ人気を博した、テレビドラマを連想された方も大勢いらっしゃるかと思いますが、ここでご紹介するのは司馬遼太郎氏の手による原作そのものです。


明治維新を経て近代国家の仲間入りを果たした日本が、やがて日露戦争なる好まざる闘いに巻き込まれて行く中、それぞれの立場で人生を駆け抜けた3人の主人公達を軸に、物語が進んで行きます。


日本騎兵の育ての親的存在で知られる秋山好古バルチック艦隊に勝利した東郷平八郎の参謀の秋山真之、病床でも筆を取り続け近代俳諧の父的存在の正岡子規と、皆さんもご記憶の実在した人物の歴史小説です。

学生時代に社会科しかも歴史が苦手だった私、大山哲は正直、この話題作に手が伸びませんでした。


試験勉強で彼等に関する知識の暗記に苦戦した苦い思い出が先に立ってしまい、読書を楽しめるとは思えなかったのです。


ですが先に触れたテレビドラマを偶然目にした事で、そんな間違った先入観は直ぐに消え去り、急いで書店に走った事を覚えている、乱読家を自認する私にとって、非常に印象深い作品です。

ストーリーの格の1つを担う、日露戦争なる歴史上の出来事を境に、若き日はそれぞれが奔放に明るい未来を見据えて生きていた登場人物達の人生は、数奇な運命へと導かれて行きます。


私自身よもや騎兵隊を育成から率いる、あるいは戦艦に乗船して海上で他国と闘うような人生など、想像出来るはずもありませんし、それは皆さんも一緒に違いありません。
仮にそんな世の中そして人生の選択を余儀なく迫られたとすれば、現実と対峙から立ち向かう気力を果たして有しているのか、正直自信はありません。
言葉は不適切かも知れませんが、豊かで便利が過ぎた今日の生活環境の中、平和ボケから現実逃避すら出来ず、ただ心臓が動き続けている生命体と化してしまうかも知れません。

ですがこの時代の人達は、今日言うところの「上昇志向」を、胸一杯に抱いて生きていました。


それぞれがひたすらに青い空に浮かぶ白い雲、すなわち各々の大志に向かい、ある意味楽天的とも表現出来る価値観で走り続けていた事を、この作品が私達に教えてくれています。
良い意味での愚直一直線な生き方だからこそ、日露戦争なる想定外の現実の中、自らに与えられた仕事を天命と捉え、真正面から挑んで行ったのでしょう。

便利簡単楽チン・・・あらゆるジャンルでこれらが重宝され良しとされる昨今、果たして現代人である自分達のDNAの奥底に、彼等のこの価値観が受け継がれ残っているのか、そんな事を考えさせられました。


歴史物やノンフィクションがお好きな方々は勿論の事、ご自身の現在から未来に何らかの疑問を抱いておられる方々にもご一同いただきたい、読みごたえ十分以上の長編小説です。