大山哲と本。

大山哲。本が大好きです。オススメの本や読みやすい本を紹介していきます。

大山哲の今日の一冊!空飛ぶタイヤ

こんにちは。大山哲が選ぶ今日の一冊は空飛ぶタイヤです。

空飛ぶタイヤ:Amzon

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直木賞受賞作家の井戸潤氏が描く、とまらない企業の不正にスポットを当てた、果てしなくノンフィクションを感じさせる渾身のフィクション作品です。


まるでニュース番組のドキュメンタリーのようなリアル感と、何より不正に関わる人間模様のおどろおどろしさが時に恐怖感を覚える程の描写で描かれており、私達の感性を鷲掴みにして離しません。

 

ストーリーは極めてシンプルかつお決まりの勧善懲悪の、私達が1番安心満足出来る王道の展開です。
忘れる前にニュースをにぎわす企業不正関連の報道を、私達は「またかよ」と見聞き流してしまいがちですが、そうした現場を部外者にも分かりやすく描く、井戸氏の文章力にも脱帽です。
弱い立場の登場人物や組織に思わず肩入れしてしまったり、逮捕状を手に乗り込む場面の臨場感にドキドキさせられたり、読書ならではの醍醐味を堪能出来ます。
ちなみに私、大山哲は、幼い頃に一生懸命テレビにかじりついて見ていた、一話完結の特撮ヒーロー番組の世界と、どこかしら共通する感覚を覚え、ラストの爽快感が最高でした。

総ページ数が500を越える長編ですが、電車移動の合間なども手放せず、実質足掛け2日で読破しました。
そんな電車の同じ車両には、沢山の年配のスーツ姿の男性が、ある人は吊革に掴まり、別の人は偉そうに大股開きで座席を占拠から高いびきでした。
「この人達も企業不正に関わっているのかも」などと妄想を膨らませてしまいましたが、それだけ真実味を帯びた作品なのでしょう。

 

ちなみに多くの方々の感想も、読み終えた後のスッキリ感、登場人物に思いっきり感情移入してしまったなど、あくまで読者のスタンスから、描かれた世界を作品として楽しまれた事を語る内容が数多く見られました。報道番組では何やら難解な犯罪と取り上げられる話題を、肩肘張らず読み切る事が出来る、極めて完成度の高い作品だと思います。

現実に強大な企業からの圧力に窮しておられる方々にとっては、あまりにリアルで身につまされる場面が散りばめられているかも知れません。
それでも実社会の側面を知る上で、例えば主婦層の方々、企業社会以外の世界で生計を立てておられる方々などに、ぜひご一読をお薦め申し上げます。
日々疲れた身体で帰宅されるご主人が、あるいは実社会デビューからその荒波で闘うご子息など、もしかすれば既に登場人物なのかも知れません。
今この瞬間にも水面下で生じているかも知れぬ企業不正、無縁に越した事はありませんが、その実態を読書を通じて知っておくのもまた、私達にとって決して無意味ではないでしょう。