大山哲のこの一冊!弱くても勝てます
こんにちは。大山哲が選ぶ今日の一冊は弱くても勝てます です。
民放でテレビドラマ化もされた小説ですので、名前くらいは聞いたことのある方も多いのではないでしょうか。
弱くても勝てますは、東大合格者数一位を何度も獲得している名門私立・開成高校にある「頭は良いが野球は弱い」弱小野球部が、東大出身の田茂監督(実在は青木監督)の指導の元、常識を覆す方法で東東京大会ベスト16まで勝ち進んでいく、という爽快なノンフィクション小説です。
作者の高橋秀実氏は、テレビ制作会社勤務を経てフリーライターになった後、ノンフィクション作家になった経歴の持ち主です。
2011年には「ご先祖様はどちら様」で小林秀雄賞を受賞、弱くても勝てますは第23回ミズノスポーツライター賞優秀賞を受賞しました。
弱くても勝てますの魅力は、そのタイトルに詰まっています。弱くても方法次第で勝てます、と言い切っている力強さに心地良さを覚えます。
最初タイトルを見た時、「生徒のうち4~5割が東大に進学する名門進学校の野球部のことだから、効率の良い練習方法で短時間で上達し、試合ではデータを駆使した頭脳プレーで圧倒して勝ち進んでいくのだろう」と安易に予想してしまったのですが、本文を読んでその予想は大きく覆されました。
監督がはっきりと「野球が下手なんです」と言い切るくらい弱い野球部の生徒たちは、実際「弱いまま」決して頭脳派とはいえないドサクサ戦法で勝ち上がっていきます。
監督に「野球をしようとするな」と怒鳴られながらぎりぎりで勝ち進んでいく姿はノンフィクション特有のハラハラ感満載です。
弱くても勝てますは、監督や生徒たちのやり取りがとにかく笑えます。
そして頭は良いのに野球は下手な生徒たちの、精一杯野球を楽しもうとする姿勢にホロリとさせられます。
人間の生き方のひとつの見本として参考になる良質なノンフィクション小説です。