大山哲と本。

大山哲。本が大好きです。オススメの本や読みやすい本を紹介していきます。

大山哲の今日の一冊!塩狩峠

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塩狩峠:Amazon

 

こんにちは。大山哲が選ぶ今日の一冊は塩狩峠です。

 

実話に基づく三浦綾子さん作の小説は後に映画化され、多くの読者や観客の涙を誘った名作として、既にご存知の方も大勢いらっしゃるに違いありません。

 

日本はこれまで幾つもの悲惨な鉄道事故を体験していますが、そうした中で鉄道員が自らの身を挺して暴走列車を止めた、伝説として後世に語り続けられる事故を題材に、この物語は綴られています。


時は明治42年2月28日、場所は北海道の塩狩峠、主人公である鉄道職員の長野雅雄は1人の乗客として、名寄から旭川に向かう途中でした。

そして石狩峠を列車が走行中、何と連結器が外れてしまい、最後部の客車が進行方向とは反対に峠を下り始めてしまいます。
どんどん加速する客車はこのままでは脱線確実と言うその時、乗り合わせていた長野はデッキに飛び出し非常ブレーキで何とか客車を止めようとしますが、完全に止まりません。

長野は客席に向かって僅かに微笑むと、自らの身を車輪とレールの間に投げ打ち、小さな音と同時に客車を完全に停車させたのです。

ちなみに敬虔なクリスチャンでもあった長野は、常に遺書を懐に忍ばせており、奇しくもその時、教会である不思議な出来事が生じていたのでした。

 

列車の運転手や乗務員の不真面目な勤務態度が、インターネットを通じて時折報道されています。スマホ運転、携帯で会話しながらの勤務、果ては運転台に両足を投げ出しての超高速列車の操縦など、正直列車に乗るのが怖いと感じさせられる残念なニュースばかりが記憶に残りがちです。

勿論不幸にもご自身が長野と同じ立場となられた際、同じ行動を選択される職員の方もおられるに違いありませんが、ぜひ今現在鉄道関連のお仕事に従事されている方々にも、一読をオススメと言うよりお願したいのが、私、大山哲の偽らざる気持ちです。

 

単なる感動の実話だけでは済まされない、数々の教えが詰まった作品だと思います。

自らの生命を職責に、あるいは第三者の生命と引き換えに捧げてしまう長野の選択には、当然賛否両論あって当然ですし、あるべきでしょう。乗り合わせた他の乗客に協力を仰ぎ、非常ブレーキを引き続ければ、結果全員助かったかも知れません。
果たして突然極限状態に置かれてしまった時、果たして自分は何が出来るのか、どれだけ冷静に立ち振る舞う事が出来るのか、大きな問い掛けを与えてくれます。


ドキュメント的な作品は何となく苦手とおっしゃる読書家の皆様にも、ぜひ手に取っていただきたい一冊です。
読み返す度に心と眼球の洗浄が叶う、本棚に大切に保管しておきたい作品です。